長澤まさみ主演の『群青』(中川陽介監督)は沖縄の孤島、南風原(はえばる)島を舞台にしており、ロケ撮影は沖縄県・渡名喜島で行われた。映画を上映する劇場には撮影に使われたロケ地の地図が備えられていた。映画を見た観客にロケ地を訪れてもらいたいという意図からである。

群青 (小学館文庫)
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 近年、ロケ地観光による地域の活性化が注目されているが、ロケ地観光は目新しいことではない。例えば、ブーアスティンは40年以上も前に以下のように記述している。

 「世界中どこでも、人々は観光客のためにけばけばしく着飾ってくれる。しかし、着飾ろうという彼らの真剣な努力も、テクニカラー映画にくらべれば、はるかに見 劣りする模倣品を作り出しているにすぎない。そして観光客は、テクニカラー映画が本当かどうか確かめるために旅行するのである。かの「永遠の都(ローマ)」でさえ興行的に大当たりをした『ローマの休日』の撮影場所として有名になっている。観光巡礼客は『ベン・ハー』や『スパルタカス』のような有名な映 画が撮影された「実際」の場所を訪れたがる。シナイ山は『十戒』が撮影された場所として有名になった。1960年には、レオン・ユリスの小説『栄光への脱 出』のなかで起こった出来事の場所を歴訪するという団体観光旅行が組織され、大成功を収めた。その翌年、エル・アール・イスラエル航空会社は、オットー・ プレミンジャーの一行が『栄光への脱出』の映画を撮影した場所全部を16日間で回るという旅行プランを発表した」

−Boorstin, Daniel J., The image: or, what happened to the American dream, Harmondsworth, Middlesex: Penguin Books, 1963(後藤和彦・星野郁美訳『幻影の時代:マスコミが製造する事実』東京創元社、1964年)

 フイルムコミッションなど、映像による地域活性化という議論もさかんだが、出来上がったコンテンツに魅力がなければいかに地域活性化を唱ったところで意味をなさない。

 映画は作品の魅力が第一なのであって、その結果の一部として地域活性化がある。地域活性化のための映画など存在しない。だからいくら地域活性化のために映画を活用するなどという青写真を描いても、作品がつまらなければ誰もロケ地に出向こうなどとは思わない。ロケ地観光を唱うためには当然、作品そのものに人々をロケ地に足を運ばせるだけの魅力が必要なのである。