Matilda [DVD] [Import]



『マチルダ』のストーリーを3幕構成で書いてみると次のようになるだろう。

序:悪徳中古自動車セールスマン一家に天才肌の女の子マチルダが生まれる。マチルダは読書が好きで、どんどんと知識を吸収するが、家族はそれを受け入れず、学校にも行かせてもらえなかった。

だが、ある小学校の校長が父親から中古車を買ったことがきっかけで学校に行くことになる。

破:学校は校長に独裁されており、しごきが行われていた。

マチルダの女担任のハニー先生は聡明でマチルダのよき理解者となる。校長のしごきは続く。ハニー先生は校長の姪だが、担任の親は校長に家を奪われていた。

急:マチルダには超能力があった。マチルダはそれをトレーニングで開花させ、校長に仕返しをする。

校長は学校を去り、ハニー先生は家を取り戻す。マチルダの家族はグアムに引っ越し、マチルダはハニー先生の養子となり、二人は仲良く暮らす。

もう少し詳しく見ていきたい。
「序」は状況説明に当たる。マチルダがいかに天才で、残りの家族がいかに凡庸かを描く。テレビのくだらないバラエティ番組が、悪の象徴として描かれている。父親がマチルダに無理矢理テレビを見せようとすると、テレビが爆発するというシーンを入れ、「急」で使われる超能力の片鱗をこの段階で一度だけ見せている。

「破」は校長がいかに独裁者で嫌な奴かをコミカルに描いている。学校でのしごき、校長の家への侵入劇などのエピソードで構成されている。

途中、父親の悪事を捜査する捜査官のエピソードが絡む。超能力の片鱗がここでも示されている。

「急」ではマチルダの超能力を使った反撃が中心に描かれる。主人公の反撃相手としては、両親を悪者に設定するよりも暴力的な校長先生のほうが受け入れられやすいだろう。小学校の生徒全員に憎まれている校長をやっつけるということでカタルシスも大きい。

担任の先生が新しい校長になり、学校自体も大きくなるという成長も語られている。

原作はロアルド・ダールの小説だが、そんなことを知らなくても映画は映画だけで十分に成立している。天才少女の話だけでも十分成立するはずだが、超能力を取り込むことで、わっと世界観が拡大している。