09ic08

イギリス人監督ショーン・マカリスターが山形を舞台に日本のワーキングプア層の日常生活を追った「ナオキ」は、監督自身がカメラを持ち、被写体であるナオキ及び周辺の人物をインタビューする形式で撮影されている。インターナショナル・コンペティション出品作品。

ナオキは、外人向けのバーを経営していたが、店がつぶれた後、時給八百数十円で郵便局のアルバイトをしている。同棲しているかなり年下の恋人は昼の仕事の後、夜も仕事をし、働き詰めの生活だ。恋人の方が収入も多く、ナオキは主夫の状態だ。しかし、生活は楽ではなく、狭く雑然としたアパートで暮らしている。

アフリカでは人々が貧困に喘いでいる。でも、日本では食うために何十時間も働かなくてはならない。どちらのほうがいいか。ナオキはそう問いかける。

だが、ワーキングプアとはいっても、日本では死の恐怖と隣り合わせになっている訳ではない。戦闘状態にある国々とは違うのだ。狭くてもアパートに住み、酒を飲むことができるだけの余裕がある。

カメラは日本の職場の実態や恋愛問題など、様々な側面を写し出す。監督は魅力的でいい被写体を選んだものだ。

上映終了後の舞台挨拶で、佐藤直樹さんは「恥をさらした分だけ、何か得たような気がする」と話した。(了)

PA110207
ショーン・マカリスター監督と佐藤直樹さん(撮影:矢澤利弘、10月11日、山形市民会館大ホール)