オランダ人監督レナード・レテル・ヘルムリッヒの「約束の楽園」(2006)は、ジャカルタ在住の人形使い兼吟遊詩人のアグス・ヌール・アマルが爆弾テロ事件の真相を追求する姿を描いている。

アグスがテレビの画面を模した舞台で、9.11テロをユーモアを交えながら子どもたちに説明するシーンからこの作品は始まる。おもしろおかしくちゃかしながらテロの首謀者ウサマ・ビン・ラディンの罪を激しく非難する。

どんなことを話すにしても、即興で節を付けながら話をするアグス。最初は彼のことを真剣味のないふざけた人間だと思うかもしれない。ナイトクラブに爆弾を仕掛けて、罪のない人々をも巻き添えにしてしまった犯人の罪を追求するために彼はバリ島に赴く。収監されている犯人と面会し、彼はユーモアを交えた話し方をしつつも、その罪に厳しく切り込む。

自爆テロの犯人は自分は天国に行けると信じてテロ行為に挑む。しかし、本当に犯人は天国に行けるのだろうか。アグスは霊能力者に質問する。当然、明快な答えは得られない。

怒りに任せて人の罪を追及するのではなく、彼は冷静かつ淡々と犯人を追いつめる。むしろそのほうが事件の悲しみが伝わってくるようだ。そして、アグスの真実を見極めようとする真摯な心が垣間見える。

この作品は、ジャカルタにこんな魅力的な人物がいることを教えてくれた。(了)

(2009年10月12日午前10時、山形市民会館小ホールにて鑑賞)