
「被写体をめぐる法制と慣習」セミナー
J-Pitch事務局は13日午前にセミナー「被写体をめぐる法制と慣習」を主催した。セミナーでは、山上徹二郎氏(プロデューサー、シグロ)とカルメン・コボス氏(プロデューサー、コボス・フィルムズ)が以下のように語った。

山上徹二郎氏
山上徹二郎氏:
「映画『靖国』について、日本で設立した法人が中国と合作した。当初、都内の四館、渋谷、新宿、六本木、銀座で公開をスタートする計画だった。
政治家の批判的発言が始まったころから、右翼の示威行動が始まった。そこで銀座の映画館側が自主的に上映を取りやめたいということになった。色々な映画人から抗議の声が上がり、渋谷の劇場が上映を引き受けることになり、興行的には成功し、1億6000万円の興収をあげた。
この事件の問題点としては、まず、大きな政治的介入があったことだ。芸術文化振興基金の助成を受けている映画だったため、日本の批判をする映画に助成をするとは何事かということになった。審査の経緯などに政治家が圧力をかけてきた。その後、映画への助成は文化庁の助成制度に一本化された。審査の内容も厳しくなった。
また、神社庁から無断撮影、許可されていない部分まで撮影しているという抗議文が届いた。この映画は何年にも渡って、靖国神社の8月15日の様子を撮影したものだ。抗議文は届いたが、訴訟には至っていない。この一年、新たに抗議文も来ていない。映画では、刀匠(刀作り)が登場するが、彼が出演することを許可したのかという問題が起きたが、徐々に消えていった。
劇場公開が終わり、DVDが発売されたが、今年になって肖像権を巡って訴訟が起こされた。ある人物がお茶屋で勝手に撮影された、隠し撮りされたということで、DVDの販売差し止めを主張してきた。だが、その部分は、カメラにワイドコンバーターを付けており、至近距離から撮影したもので、隠し撮りではない。事実、彼の主張する撮影年度は実際に我々が撮影した年度と違っている。」
「今まで書面で許可を取ることはしなかった。個人情報保護法があるために、自己規制してしまうことも多くなった。」
「今後、映像の悪意に基づいた改変は避けられない。被写体となった人々との信頼関係を続けていく。一生付き合うと決めておく。説明責任があると思う。これが、ドキュメンタリーをやる者の責任だと思う」

カルメン・コボス氏:
「国によって法制は違う。フランスは肖像権が厳しく、フィルムメーカーが保護されない。パリの有名な墓地の映画を作ったことがあるが、撮影が難しかった。パリからの許可のほか、墓の所有者である150ぐらいの家族から許可を得なければならなかった。」
(2009年10月13日午前10時−12時、山形市民会館小ホール)