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東北経済産業局は12日、シンポジウム「地域映画祭を考える〜映画祭等を通じた地域づくりの可能性〜」を開催した。

パネリストは澤田直矢(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、特定非営利活動法人ゆうばりファンタ代表理事)、小川孝行(あきた十文字映画祭実行委員会代表 、横手市観光物産課長)、吉村和文(山形国際ムービーフェスティバル運営委員長)、山川渉(やまがたフィルムコミッション事務局員)、司会は早坂実(しらたか的音楽映画塾)が務めた。(敬称略)

シンポジウムでは以下のような発言がなされた。

澤田直矢氏:
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭は1990年にふるさと創成資金をもとにスタートした。2006年にいったん中止したが、2008年に復活させた。来年が20回目。5日間開催する。夕張市は過疎化している。当時は億円規模だったが、それが続くうちに市民も映画祭に参加するようになり、アットホームな映画祭となっている。

この映画祭はファンタスティックとはネーミングされているが、総合映画祭に近い。映画祭には4部門がある。招待作部門は、メジャー系作品を12から13本上映する。華やかなゲストが来て、マスコミ的には注目を集める部門だ。それとは反対に、オフシアターコンペティション部門は新人の登竜門で、作品を広く募集し、毎年300本程度集まる。次回作の製作支援を行っている。メジャーとインディーズの中間に位置する監督たちの作品を応援していこうというフォーラムシアター部門や旧作のオマージュ上映やリバイバル上映をする特別上映部門もある。ピーク時には2万6000人が集まったが、前回は5日間で1万1000人弱が集まった。

北海道の中のゆうばり映画祭という位置付けにしたいが、札幌や北海道のゆうばり映画祭に関する関与が少なく、夕張と東京が直にやっている。逆に夕張ばかりが注目されると妬まれたりしており、地元とのつながりを強くできないかと思っている。

ゆうばり映画祭は歓迎ムードがすばらしいと言われるが、歓迎は誰が始めたのか分からない。特別列車が通るときに、仮装したりすると面白いということで、誰かがやり始めた。

財政破綻したときに懸念したのは、文化的なものが切られるということで、実際に駄目になった。その中で「映画祭をつぶすな。がんばれ」という声もあった。しかし、破綻当時には人々の生活自体がどうなるか分からなかったので、大々的に活動すると非難の対象になると思って水面下で動いた。それまで映画祭を支援してくれていた人がたくさんいたのが大きかった。2006年に破綻して、2007年にはメディアで大きく取り上げられて注目されたが、大体が一過性のものだった。映画祭を続けていて、一番面白いのは有名人が地元の人たちと交流していることだ。」

小川孝行氏:
「あきた十文字映画祭は今年2月に18回目をやった。3日間の開催で、初日はアジア映画、二日目は企画もの、三日目は最新作という構成で、普通は12本、多い時は13から14本を上映する手作り感覚の映画祭だ。現在19回目の仕込みをしている。

サークル「夜間飛行」での上映がきっかけで、最初の作品は『クレーマー、クレーマー』で、これが当たった。途中、上映会どころではないという時期もあったが、1口2万円という切り口で50から60件の協賛金を集め、3ー4年続けた。補助金ももらった。企画を変えないと役所からお金が出なくなるので、変化させながら続けた。5年ごとに補助金の対象となるようなものを作り上げた。最初はノウハウが無かったので、湯布院に研修にいった。

運営側も世代交代しており、2年ほど自分が運営に関われなくなったときが一つの転換点となった。」

吉村和文氏:
「山形ムービーフェスティバルは、2005年に東北のケーブルテレビ13局が手を結んで東北の素材を利用して新しいクリエーターを育てようとして立ち上げた映画祭だ。若手クリエーターを育てるという土壌が日本には無かった。ぴあフィルムフェスティバルは700本ぐらい集まる。スカラシップで1000万円を授与することにした。この映画祭で受賞した作品は海外の映画祭でも受賞することが多い。

全国の映画産業は2000億円と小さな産業である。キングオブコンテンツと言われる映画は作るのも大変だし、流通させるのも大変だ。プロとしてしっかり食べていける人々が少ない。1回の映画祭で3000万円ぐらい集めている。2000万円をスカラシップに充て、1000万円で運営している。ただ、1000万円では赤字になり、我慢比べといったところだ。

日本ではマスコミュニケーションではなく、マスインフォメーションだった。人が集まってくるのは映画館であり、ミクシーのようなソーシャルネットワークサービスもそうである。そこに行かなければ会えない。それが映画の持っている特性なのではないか。」

山川渉氏:
「平成17年度にフィルムコミッション(FC)を作った。平成16年度に観光物産課に配属となって、全国のFCを調査した。その後、問い合わせ、実績とも増加している。具体的には、平成17年度の問い合わせは31件、実績は25件だったが、18年度は54件、36件、19年度は105件、51件、20年度は112件、54件となった。21年度の実績は60件ぐらいになりそうだ。役所的な対応をしていたらロケはすぐに逃げられてしまう。まずは色々なロケを山形市に受け入れよう、そして市民にロケを体験してもらおうと思った。

FCの課題としては、面として、他のFCとの連携をする必要がある。できるだけ多くの地域で連携体制を結んで、エリアとしてPRする必要性があると考えている。」

(2009年10月12日午後1時−3時、スポーツプラザ21(山形市七日町二丁目7-10 NANA BEANS 8F))