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映画のスクリーンって何なのだろう。きっと、人を集めるための魔法の布なのではないか。インドのデーウ・ベネガル監督の『ロード、ムービー』はそんな気にさせてくれるロード・ムービーだ。

タイトルは『ロード、ムービー』であって、『ロード・ムービー』ではない。映画のフィルムと映写機を運ぶ短い旅の物語だ。父親の営むヘアオイル事業が嫌いな主人公ヴィシュヌは、ポンコツトラックに乗って、海沿いの美術館に荷物を届けるために旅に出る。当然、「旅は道連れ、世は情け」というセオリーどおり、少年と自動車修理のできる中年男性という道連れができる。少年は町に職探しに、中年は祭りの場所まで連れて行けという。

彼らの武器は映画を野外上映できること。どんな場所だって、スクリーンを張り、面白い映画を上映すれば、いつだって魔法のようにどこからともなく大勢の人々が集まってくる。そうすれば、たちまち不毛の砂漠が祭りのようになる。

都会に住む青年、生意気な子ども、たくましい中年、そして、魅力的なジプシー女。彼らの住む世界は違う。ロード・ムービーだから、終わり方もパターン化している。目的地に到着すれば、映画は終わりだ。

良いロード・ムービーかどうかを判定するのは簡単である。映画から風を感じることができるかどうか。

唐突な展開が気にならない訳でもない。だが、インドの砂漠の暑苦しい風の匂いを感じ取ることはできる。(了)

(2009年10月15日午前10時、映画美学校第1試写室)