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ドキュメンタリーなのか、それともおとぎ話なのか。メルセデス・モンカーダ・ロドリゲス監督の『人魚と潜水夫』は不思議な作品だ。

漁村で生まれたミスキート族のシンバッドはひ弱な子どもだったが、徐々にたくましく成長し、潜水夫となる。スーパーインポーズタイトルで、人魚伝説のような物語が語られていくが、写し出される映像は極めてドキュメンタリータッチだ。

シンバッドの生まれるシーンでは、実際に母親の膣から赤ちゃんの頭が出てくる過程を撮影している。途中、アニメーションで処理しているシーンもあり、どこまでが真実で、どこまでがドラマなのか、その境界線がはっきりしない。また、カメラは主人公を追い続ける訳ではなく、ニュース映像のようなタッチが続く。

人魚から生まれた子どもが再び海に帰っていく。そんな寓話をいかにももっともらしく表現しようとしたら、ドキュメンタリーのような映画になったということなのだろうか。(了)

(2009年10月17日午後7時10分、東京国際映画祭、TOHOシネマズ 六本木ヒルズアートスクリーン)