
ホセ・ルイス・ゲリン監督の『イニスフリー』(1990)はジョン・フォードが『静かなる男』を撮影したアイルランドのイニスフリーを巡るドキュメンタリーである。
村人たちは撮影当時のようすを何度も振り返る。ジョン・ウェインはどんなことをしていただとか、ジョン・フォードはどんな人物だったのかとか。はたまた映画に出てくるシーンと現実の建物ではどこがどう違うとか。作られた映画が名作である限り、何年経っても、こうした話は古びないのだ。
歴史に残る映画のロケ地はその当時のようすがそのまま永遠のものとなる。撮影が終わり、かなりの年月が経過したとしても、ロケ地は映画とともに語り継がれることになる。
日本でも全国各地にフィルムコミッションができている。映画のロケ地となることは、金銭的な活性化だけでなく、その地域の人々の心を潤すことになるだろう。ただし、そのためには完成した映画が結果として歴史に残るようなものであることが必要である。
この映画の撮影に当たっては、まず『静かなる男』のロケ地を個別に特定することから始め、通常の3倍ほどに当たる23万フィート以上のフィルムを撮影し、『静かなる男』の画調に近づけるために黄色のフィルターを使用したという。
(2009年10月17日午後9時、東京国際映画祭、TOHOシネマズ六本木ヒルズプレミアスクリーン)
(再見、2014年4月24日午後6時30分、広島県映像文化ライブラリー)