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松村浩行監督の「TOCHIKA」は、北海道、根室にあるトーチカを舞台に、男女ふたりだけの登場人物によって描かれるどんよりとした物語である。

せりふもカットもストーリーもぎこちない。わざとそうしているのか。それとも単に稚拙なだけなのか。ごう音とともに、トーチカの暗闇のなかの男を延々と写し続けるだけのカット。全体的に画面は暗く、テンポもない。これも意図的にそうしているのか、そうなってしまったのか。分からない。斬新なことをやろうとして空回りしているようにも見える。いや、実に効果的にも見える。

暗く、テンポのない映像は見る側にとっては気持ちのよいものではない。しかし、これもまた、意図的に観客の気持ちを悪くさせようとしているのか、それともそうではないのか。

長編ではなく40分程度の長さの映画にすればよいのか。それとも映画ではなく、演劇という形態にすればよいのか。それともこのままでよいのか。単純明快でないところがこの作品の深さである。(了)

(2009年10月18日午後4時20分、東京国際映画祭TOHOシネマズ六本木ヒルズプレミアスクリーン)