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断崖絶壁から飛び込む男。電化製品の散乱した道。緑の草むら。ぬかるみ。ここはどこなのか。主人公とおぼしき男は誰なのか。そして男は何をしているのか。

ヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督のスリランカ映画『2つの世界の間で』では、舞台や人物の設定すら明確な説明がなされることはない。台詞は極限まで省略され、解釈は観客に委ねられる。だから、漫然と見ていると、ストーリーは全く分からなくなるし、そもそも明確なストーリーがある訳でもない。

映画は、ある一人の男が軸となっていて、カメラは男とともにスリランカの大自然の中を時空を超えたかのように旅をする。スリランカの大自然。バケツで水を汲み続ける男たち。うっそうと生い茂る草。観客は次々と繰り出される映像の断片を堪能するしかないのだろう。(了)

(2009年11月23日午前10時、有楽町朝日ホール、第10回東京フィルメックス)