fc08main

いつ、殺人のための仕掛けが作動するのか。
主人公の行動。その一挙手一投足に震えさせられる。

ソイ・チェン監督の
『意外』は、事故に見せかけてターゲットを殺害する殺し屋組織を描いた香港製犯罪映画である。ジョニー・トーがプロデュースしている。

みごとなチームワークでターゲットの行動を操り、仕組まれた事故に導く殺し屋たち。しかし、ある「事故」が発生し、暗殺計画は失敗に終わり、仲間を失うことになる。果たしてその「事故」は本当に事故だったのか、それとも誰かが組織のリーダーを殺すために意図的に引き起こした事故だったのか。

グループの誰かが裏切ったのかもしれない。疑心暗鬼に陥る主人公。アクションよりもむしろ心理劇的な要素で展開する。自分が狙われていることに脅えるリーダー。誰も信用できなくなり、次にどんな仕掛けで自分が作られた事故に巻き込まれるのかという恐怖に負われるようになる。

だが、それは観客にとっても同じだ。主人公が行動を起こすたびに、何かが起きるのではないかと、身構えざるを得ない。ドアを開ける。自動車のエンジンをかける。封筒を開ける。観客は主人公の行動を目撃するたびに緊張を強いられることになる。

滅び行く者の美学、それはひたすらにかっこよく、そして美しい。(了)

(2009年11月23日午後12時20分、有楽町朝日ホール、第10回東京フィルメックス)