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(C)「日本の青空II」製作委員会

大澤豊監督の『いのちの山河〜日本の青空II』は、いかにも古風な演出と構成で、セリフも教科書的だ。観客をジーンとさせようとしているのが分かる。だが、それにだまされてみるのも悪くない。

豪雪地帯にある過疎の沢内村の村長の活躍を描いた一代記である。貧困にあえぎ、乳児死亡率の以上に高かった村が、村長の生命と福祉尊重という理念と奮闘により、日本で始めて乳児死亡ゼロを達成するまでになる。沢内村は日本で始めて65歳以上の医療費を無料にした村でもある。

汚れがなく、村民のために命をかけた村長を描いているため、思わずこんな政治家がいれば、と思ってしまうことだろう。

だが、一歩間違えば国家指導者を美化する国策映画のようなものにもなってしまうだろう。「村長はこんなに人々のためを思っていたすごい人なんだよ」という具合である。

だが、現代の映画慣れした観客は、そうした国策映画をむしろ珍品映画として楽しんでしまう。

ベタな展開、汚れのない主人公、職業意識の強い役人たち。こんな教育映画に涙してみるのも悪くない。

(2009年12月16日午前10時、新宿武蔵野館2)