
全編を通じて聞こえてくる鈴の音。愚痴をこぼしてばかりいる婆さん。牛ばかりをかわいがる爺さん。
イ・チュンニョル監督の韓国映画『牛の鈴音』は、老いぼれ牛を通じて、田舎で農業を営む老夫婦の間の絆を捉えたドキュメンタリーだ。
農薬も機械も使わないと主張する夫。40年も生きている老いぼれた牛はパートナーだ。牛はかわいがるけれども、自分を大切にしてくれないと妻は愚痴ばかりこぼしている。「牛は幸せだけど、わたしは苦労ばかり」。
何も大事件は起こらない。牛がリアカーを引き、夫婦が雑草を刈り、田植えをする。今日も牛に付けられた鈴の音がチリンチリンと鳴っている。
牛は寿命を全うし、首からは鈴が取り外される。愚痴ばかりこぼしているが、明らかなのは老夫婦の絆。
どこにでもいるような農村の老夫婦。緑の田んぼ。蛙。ここにもひとつの人生がある。
(2010年2月3日午前11時、新宿武蔵野館3)2010-15