
2009年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたウケ・ホーゲンデイク監督のオランダ映画「アムステルダム(新)国立美術館」が『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』の邦題で2010年8月21日からユーロスペースにて劇場公開される。
同作は、レンブラントの「夜警」で有名なアムステルダム国立美術館の改修工事を巡る利害関係者の主張のぶつかり合いと不可解な規制によって、理想に満ちた新美術館の設計が妥協の産物となり、あげくの果てに工事が中断され、美術館は休館状態のままとなるという顛末を描いている。
何気なく見ている美術館の展示一つにしても、専門家はそのひとつひとつに意味を持たせている。ただ、理想がいかに誇り高いものであろうと、既存のものを変化させることを嫌う人々も多い。この映画が示すように、これまで市民が自由に通行していた通路を縮小し、見栄えの良いものを作ろうとする建築計画に市民は異議を唱える。そして、妥協の産物として、面白くも何ともないようなものが出来上がるのである。
撮影には4年を要した。カメラは建物の内部にまで入り込み、館長が京都に仁王像を買い付けに行くところまで同行している。だが、このドキュメンタリー製作が最初から関係者に受け入れられていた訳ではない。粘り強く通い続けてようやく信頼してもらえたのだという。
計画を主導した館長は新美術館の建設途中で辞任することになる。ホーゲンデイク監督はシナリオのようなものを一応は書いたが、撮影を始めてすぐに捨てることになった。当初は4年間かけて撮影を行い、開館と同時に発表するつもりだったが、美術館の工事は中断し、少なくとも2013年までは休館することになってしまった。さすがに8年も待つことはできないので、いったん打ち切りにしてそこまでの部分を公開し、残りは新しい美術館の開館と同時に発表したいとのことだ。
どこの国でも行政の許認可は不可解だ。民主主義の名の下で、専門家が熟考した意見が、それに反対する多くの素人の人々の意見によって、つぶされてしまうこともある。
監督はこの作品の背景を「きわめてオランダ的な問題だ」と説明するが、こうした問題は日本にも当てはまりそうだ。(了)
ウケ・ホーゲンデイク監督(撮影:矢澤利弘、10月11日、山形市中央公民館)