冒頭から5分間ぐらいまでの第一印象は大嫌い。だが、最後の最後まで見てみると好きで好きでたまらない映画となった。まるで、この映画に登場する「優しくない先輩」のように。
山本寛監督の『私の優しくない先輩』は主人公の少女のモノローグで展開する青春ラブコメディの傑作だ。ふざけた感じの演出が鼻につく冒頭は賛否両論あるところだろう。
だが、冒頭で投げ出してしまうと損をすることになる。スピーディーで流れるような展開。自由なイマジネーションで次々に打ち出される少女の妄想。初めて『地下鉄のザジ』や『アメリ』を見た時のような不思議な感覚にとらわれる。
エンドタイトルの長回し。決して、ハッピーエンドではないのだが、なんてハッピーな気分にさせてくれる映画なんだろう。
確かに突っ込みどころがないわけではないのだが、ラストまできちんと見れば、そんなチマチマした映画の見方など一気に打ち砕かれるだろう。
(2010年7月21日午後8時30分、新宿武蔵野館2)2010-86