recordfuture


ノートに刻まれた過去の記憶。頭の中の記憶は時とともに薄れていくが、ノートに記録された記憶は消えることがない。岸建太朗監督の『未来の記録』は過去、現在、未来という3つの時制を平行して描く。

廃屋となったフリースクールに引っ越ししてきた男女二人。部屋に散らばる品々を整理すると、そこには過去の記憶が染み付いている。

3つの時制で、自閉症の子どもと親と先生が溶け合う。そのことで、実際にその場にいるような切迫感を醸し出す。自殺という重いテーマを変化球のような技法で処理しているのは見事だ。

もっとも、制作過程においては、「完成を目指さない映画」というコンセプトだったそうで、全体のストーリー構成は十分に計算されたものにはなっていない。

そのため、一見すると前半部分が冗長に感じられるだろう(全体としてみれば、それが後半のドラマを盛り上げる効果を果たしているのだが)。

また、そもそも3つの時制のシンクロが十分に効果を上げているのかといえば、好みの分かれるところかも知れない。

全体に流れるダラダラ感が逆にドキュメンタリーのようなリアリティを生んでいる。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭長編コンペティション出品作品。


(2010年7月28日午前11時30分、SKIPシティ多目的ホール、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)2010-95