遠隔地にいる人物を写し出す鏡。一瞬で若い娘に変身する魔法使い。忽然と出現する幽霊や兵隊たち。マリオ・カゼリーニ監督の『パルシファル(照魔鏡)』(1912)は、当時のトリック撮影をオンパレードのように使った幻想的な歴史劇だ。

母親から父の聖槍を授かったパルシファルは馬に乗って旅立つ。魔法使いたちは鏡に写し出された彼の姿を見る。本来写るべきでないものが鏡に写るといういかにも映像トリックらしい映像トリックだ。

魔法使いの一人が若い女に化けてパルシファルを誘惑しようとするが、パルシファルは誘惑に負けない。女が体を寄せていこうとしても彼は突き放す。この仕草が古風で印象的だ。

パルシファルの進む道に次々と現れる困難。古典的なトリック撮影が繰り出される。映画は人を驚かせるためにあるのだ。


(2010年8月6日午後3時、京橋フィルムセンター)2010-108