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無関係な3つのストーリーがある時点で収束するというパターンのイタリアのインディペンデント映画である。

マッテオ・ボトルーニョとダニエレ・コルッチーニ監督の『そして、地に平和を』は、ローマから少し離れた郊外が舞台。3つの物語が平行し、それがある時点で結びつく。

コカイン取引をしようとする元服役囚。ドラッグに溺れる若者。カジノクラブで働く大学生。それぞれが小さな世界で生きている。3つのエピソードがあるポイントで結びつくのだが、そのポイントは偶然の要素が強く驚きはない。その点で、脚本の練り方が弱いといえる。ただ、インディペンデント映画としてみれば、まずまずの完成度ではないだろうか。

この映画ではローマの現実が描かれ、ローマ方言が使われている。インディペンデントの制作会社「キメラフィルム」の初仕事でもある。こうした小さなグループで映画がつくられることはイタリアでもまれなことだ。

今回の撮影では、アメリカではスティーブン・ソダーバーグが好んで使っているREDというデジタルビデオカメラが使われている。ひとつは経済的な理由で、フィルムで撮ることができなかったからだ。ソダーバーグやラース・フォントリアがこれを使っている作品を見てもフィルムとあまり変わりがないと納得できたため、REDを選んだ。 撮影前にテストをしたが、撮影監督のダヴィデ・マンタがREDからプリントを起こして、それで満足できるという結論がでた。

ダニエレ・コルッチーニ監督によれば、脚本を書くにあたって、ゲットー地区の取材に何度も行き、色々なところをロケハンし、子どもの頃から見ていたコロビアーレという郊外の町を選んだ。映画の中の大きな長い建物があるところだ。この場所を選んだのは、映画の中のいくつかのストーリーを展開するために良いと思ったからである。人口は14000人程度で、大きな建物に多くの人々が暮らしている。彼らはこのセメントの怪物のような場所に対して大きな愛情を抱いている。この場所はコルッチーニ監督らがもともと良く知っている場所だった。

ローマと言えば、コロッセオやサンピエトロ寺院などが有名だが、コルッチーニ監督らが好きなのは、普通に人々の暮らしがあるローマだという。郊外にあるこれらの建物は、建設会社の破産などよって未完成のまま残されて、そこに人々が勝手に住んでしまうといった状況がある。そんな人々も社会から忘れられた存在であり、犯罪も蔓延している。現実から切り離された「マルコ」の孤独を描くためにも、コルッチーニ監督は、この1キロにも及ぶ丘の上の建物を舞台にすることが最適であると考えた。

コルッチーニ監督は、脚本を書く段階で登場人物の顔は考えていた。脚本は1015日という短い期間で書き上げなければならなかったが、並行してキャスティングをしていた。ロケハンをして、実際に撮影を開始する段階になって、そこの住人の中に自分達が思い描いていた人物の顔があった。バーにいるおじさん、バリスタ、働きながらローマ大学で勉強している女の子、それからマスコット的に描かれている知的発達の遅れたミルコという男の子、そういった人物も存在して、非常に不思議な感じがした。裏を返せば、自分たちの脚本がとても現実的だったということで、それはそれで大きな喜びだった。

出演者のマウリツィオ・テセイは、もらった脚本をすぐに気に入った。コロビアーレという場所はそれまで知らなかったが、撮影で初めて訪れたという。ただ、テセイ自身もローマ郊外生まれであり、ローマの良いところも悪いところもひっくるめてローマを愛していると話す。登場人物については、自分の周りにいる人たちの全ての要素、つまり性格や特徴を取り入れて、役作りをした。

『そして、地に平和を』は、ローマ近郊の町に住む人々の人間模様を切り取ったかのような作品に仕上がっている。東京国際映画祭コンペティション出品作品。

(2010年10月25日午後6時30分、東宝シネマズ六本木ヒルズアートスクリーン、東京国際映画祭ID上映)2010-160