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(『ウェイヴ』のデニス・ガンゼル監督、2008年11月2日、新宿バルト9、撮影:矢澤利弘)

「ドイツ人はファシズムがどこに行き着くかを認識している。ファシズムの波はどんなにかっこよくても、ファシズムをゲームとして使うものは破滅するということを描きたかった」。『ウェイヴ』のデニス・ガンゼル監督は映画の制作意図をこのように説明する。

『ウェイヴ』は独裁政治をテーマにした実習授業を担当した教師と生徒たちが次第に異常な精神状態に陥っていくさまを描いた実話を基にした作品だ。独裁政治というものは、現代にはもはや成立し得ないと考える生徒たち。授業の期間中、実際にクラスに指導者が設定され、指導者役となった教師のもとでクラスは一体感を強めていく。これまでに経験したこともないような充実感に生徒たちが次第に熱狂しはじめる。

本作はガンゼル監督にとって、2004年の『エリート養成機関 ナポラ』に続くファシズムを扱った2本目の作品。1967年に米国カリフォルニア州の高校で行われた実験を下敷きに、舞台を現代のドイツに置き換えた。 実際の実験では、生徒が本当に爆弾を作り、事故による爆発で自らの手を失うなど、映画以上に攻撃的なものだったという。


ガンゼル監督によれば、実際にドイツではファシズムに対する教育が熱心に行われている。「わたしが生徒だったときも授業でファシズムが取り上げられた。ドイツ人は十分に過去と向き合っており、行き過ぎた連帯感が独裁制を生み出すということはどこでも起こりうることを分かっている」という。


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(映画祭上映時のタイトルは『ウェイブ-あるクラスの暴走』)

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