(『チーズとジャム』のブランコ・ジュリッチ監督(右)と女優のターニャ・リビッチ(左)2008年5月16日、東京国立近代美術館フィルムセンター、撮影:矢澤利弘)
スロベニア映画『チーズとジャム』は、ボスニア出身の夫とスロベニア出身の妻という生まれ育った環境の異なるカップルの人間模様を描いている。
『チーズとジャム』という題名は、一緒に食べても合わないものの組み合わせのたとえで、チーズがボスニア、ジャムがスロベニアを意味している。映画には妻がチーズとジャムを一緒に食べるシーンがある。
主演男優兼監督のブランコ・ジュリッチは「人を区別する基準は存在しないということだ」と語る。
映画は働かない夫に愛想をつかした妻が、夫が仕事を見つけるまで戻らないと出ていってしまう設定で始まる。
映画は自叙伝ではないが、ジュリッチ監督の経験に基づいている。ボスニアで紛争が始まり、スロベニアに移ってきて、貧乏な生活を送りながら脚本を書き始めた。当初はテレビ用の企画だったが、資金が集まったため劇場用の映画として撮ることができた。
実生活でもジュリッチの妻のターニャ・リビッチは「人間は白と黒に分かれるものではなく、悪いところもあれば良いところもあるということがこの映画のメッセージです」と話した。
黒澤明監督が大好きで、フェリーニやパゾリーニなど、1960−80年代のすべてのイタリア映画から影響を受けたというジュリッチ監督。トラクターとロックンロールを題材にした最新作の撮影はすでに終わっているという。
(2008年5月16日「EUフィルムデーズ 2008」国立近代美術館フィルムセンター)