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ノートに刻まれた過去の記憶。頭の中の記憶は時とともに薄れていくが、ノートに記録された記憶は消えることがない。岸建太朗監督の『未来の記録』は過去、現在、未来という3つの時制を平行して描く。

昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティションで上映され、TAMA NEW WAVE コンペティションではグランプリを授賞した本作が、新宿武蔵野館にて5月14日(土)から劇場公開されることになった。

新しい学校を始めようと、廃屋となったかつてのフリースクールに引っ越ししてきた男女二人。部屋に散らばる品々を整理すると、そこには過去の記憶が染み付いている。1冊のノートを手に大勢の生徒たちがやってきた。ノートには「思い出を残そう」という言葉。やがて過去と現在が交錯し、未来に向かって流れてゆく。

3つの時制で、自閉症の子どもと親と先生が溶け合う。そのことで、実際にその場にいるような切迫感を醸し出す。自殺という重苦しいテーマを変化球のような技法で処理しているのは見事だ。

もっとも、制作過程においては、3年半をかけてコツコツと作った「完成を目指さない映画」というコンセプトだったそうで、全体の構成は十分に計算されたものにはなっていない。

そのため、一見すると前半部分が冗長に感じられるだろう。だが、全体としてみれば、それが後半のドラマを盛り上げる滑走路のような効果を果たしていることに気づくはずだ。

過去、現在、未来という3つの時制のシンクロ。実にチャレンジングな構成だ。

作品全体に流れるダラダラ感。良い意味で、いかにも手作りの自主制作映画といった雰囲気を醸し出す。それがドキュメンタリー映画のようなリアリティを生んでいる。




予告編