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澤田直矢フェスティバル・ディレクター(2月27日)


―各部門が自主的に動いているという感じでしょうか。
「自主的な行動もあるのですが、みんなうちの映画祭はお金が無いのを分かっているので、そんなに自由気ままにはできません。だから、この企画にはこういう経費がかかるのでどうしましょうかというようなことは例年あります。僕がここはこのようにやってくださいと指示するということはどちらかといえば少ない気がします」

―全体を統括してそのバランスをとっていくということですね。
「今年はユーバリズムという、ある意味分かりづらいテーマでした。ゴロはいいけど、では実際そのユーバリズムというのは何なのかというとよく分かりません。ユーバリズムというコンセプトで作品を集めようとすると、現実問題としてそれは難しいわけです。そこで色々なコンセプトを考えて、それを結びつけてクライアントや後援の方に説明したり、そこから現実に生まれてくるイベントを実施したりといった動きはあったりします」

―今年は結構スムーズで、あっという間に終わったという感じがしますね。
「私は一応、映画祭の顔の一人ですので、例えば審査員や来ている配給の方々とコミュニケーションを取るということが重要な仕事です。初めて来るお客さんは、僕や映画祭の事務局をやっている人たちの印象がすごく強くなります。ですから、できるだけきちんとコミュニケーションを取りたいと思っています。しかし、なかなか物理的に時間が取れないのが悩みです」

―強力な作品があれば人が集まるという傾向があると思いますが、今年についてはいかがだったでしょうか。
「招待作品に関しては、タイミングが重要です。特に海外のメジャー作品などは公開日の問題で出しづらいということが今年は多かったですね」

―出品したいというリクエストも多いと思うのですが、作品選定やイベントの企画などは自然に決まってくるものなのでしょうか。
「夕張に情報が集まる様になっており、随時、電話で話したりして作品を決定していきます。今年最初に上映が決まった作品は『ビー・デビル』でした。お金は 無かったのですが、プチョンでスタッフが見て、上映しようということになりました。そのときは、まだ配給先が決まっていませんでしたが、直後にキングレ コードさんが買いました」

「私が昔から言っているのはやはりオープニングとクロージング作品の重要性です。ここ3年は山本又一朗プロデューサー関連のゲストにお越し頂きました。でも、これだけ続くとさすがにどうかという話もあるので、夕張関連のゲストということになりました。ただ、現在流行しているのは3Dが基本なので、夕張だと上映できません。色々な部分で悩んでいたのですが、ディズニーの方が、次のプリントもあるからすぐにやりましょうという話になりました。クロージングはどうしようかと考えていましたが、やはりゆうばり映画祭出身の監督でいくことにしました。これこそユーバリズムじゃないですか。象徴的だったと思います」

―コンペティションは基本的にプログラミングディレクターの塩田時敏さん任せみたいなところなのですか。
「基本的には塩田さんが絞るものもありますし、僕は無作為に面白そうなものを選びます。ただ、僕自身は塩田さんには口出しはしません。僕は下見には関与しません。基本的には塩田さんが全部の作品を見ます」

「今年の応募本数は去年とほぼ同数でした。若干は変わったかもしれませんが10本くらいの誤差です。おそらく来年も同じぐらいになるのではないでしょうか」

―バランスがとれた作品構成になっていますね。
「例えば、『ふゆの獣』も応募作品で来ていたのですが、東京フィルメックスで受賞したものをコンペティションで上映するのは難しいじゃないですか。後は内田監督に話して、納得していただいた上で、コンペ外で上映させてもらいますということになりました。内田監督には申し訳ないというか、失礼な言い方になる かもしれませんが、やはり20本から30本ぐらいはコンペに入れたい作品が選ばれてくる中で、もう『ふゆの獣』に関しては夕張でハクを付ける必要があまりないのではないかということです」【つづく】