jpg



マリオ・マルトーネ監督の『われわれは信じていた』は、イタリア統一運動の底辺上の人々や事件を描いた歴史劇だ。

2011年はイタリア統一150周年にあたる。イタリア統一の英雄の一人、ジュゼッペ・マッツィーニの運動に関連した3人の男たちの4つのエピソードを通じて、統一運動の裏側を描こうとした意欲作である。

マッツィーニは共和国制によるイタリア統一を標榜した。だが、実際に実現したのは北部イタリアのサヴォイア王家による君主制による統一だった。その意味で、マッツィーニ主義者たちは敗北したことになる。この映画はまさに彼らの挫折と敗北を描いたものだ。

歴史劇だが、この映画は有名な歴史上のヒーローを描いてはいない。登場するのはいずれも無名な市民だ。撮影監督レナート・ベルタは抑えた光で地味な画づくりに徹している。統一運動に参加し、夢破れて死んでいった者たちを描くには地味な光が似合うからだ。

170分の長尺に4つのエピソードが語られるが、それぞれのエピソードは有機的に結びついてはいない。一人の主人公がメインとなって全体のストーリーが展開するわけではないので、確固とした映画の格となるものがないのだ。だから、話が散漫になり、全体が冗長になっている。特に、多くの日本人がそうであるように、イタリアの統一運動に知識がないと、映画自体を理解することは容易ではない。


(2011年4月28日午後4時30分、イタリア文化会館、特別試写会)