小さな池main
c キノアイジャパン


彼らを襲った悲劇はいつの時代でも、どの場所でも起こりうる。のどかな暮らしに満ちあふれた村に、緊急退避命令が下されたとしたらどうなるだろうか。平穏な日常が突然、外部から脅かされれば、身を守る術のない人々はいつの時代だって右往左往するしかないのだ。

イ・サンウ監督・脚本の『小さな池-1950年・ノグンリ虐殺事件-』は、朝鮮戦争が始まった1950年7月、韓国のノグンリの鉄橋下のトンネルに逃げ込んだ村の住民数百人が米軍の無差別射撃で殺害された実在の事件をもとにしている。

米軍が北朝鮮軍に負け、村に戦線が迫ってきたため、住民たちは目的地を示されないまま、避難を強いられる。保護してくれると信じていた米軍によって爆撃された村人たちは、一体どうして自分たちが殺されるのか分からないまま、次々と死んでいく。

前半は緊迫感のない村人の日常生活の描写が延々と続く。だが、侮ってはいけない。物語が進むにしたがって、だらだらとした日常生活ができるということこそ、人々にとって最高の幸せであるということを映画を見る者は再認識せざるを得なくなる。

村を追われ、さまよう村人たち。彼らに反乱分子が紛れ込んだとの情報を得た米軍は彼らを空爆することにする。彼らの頭上に爆弾が降り注ぐ。老女であろうと子供であろうと関係ない。キャメラは情け容赦なく、彼らの肉体が引きちぎられるさまを描写する。

この事件は、生存者を中心とした真相究明の要求にもかかわらず、戦後約50年間否定され続けたが、1994年に韓国人生存者が著書を出版、
1999年にAP通信の記者を通して、その全貌が明らかにされた。

この作品には主人公らしい主人公はいない。村人すべてが対等に主人公だからだ。それがドキュメンタリーのような緊張感を与える。

観客自らが村人の一人として行動しているかのような視点で画面が作られている。だから、空爆シーンは自分のとなりに爆弾が落ちてくるように本当に怖いし、村人たちが銃撃されれば、自分も身が切られる思いがするはずだ。

大阪、名古屋に続き、5月28日(土)から6月17日(金)まで、東京の新宿K’sシネマで開催される『真!韓国映画祭2011』では、この『小さな池』 のほか、『ソウルのバングラデシュ人』、『キュレーター、ジョンフンさんの恋愛日記』、『坡州 パジュ』の未公開作品4本と『ただよう想い。』、『ささやきの夏』が上映される。