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高橋康進監督(撮影:3月31日) 


映画祭は観客が映画を楽しむだけではなく、映画製作者にとっては自分の映画を広く知ってもらうための場でもある。

高橋康進監督の自主製作映画『ロックアウト』は、2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭ほか、欧州7カ国・米国3都市を含む16の海外映画祭 で上映され、2009ニューヨーク国際インディペンデント映画祭(外国語部門)では最優秀長編映画賞・最優秀監督賞・最優秀スリラー賞と三冠を達成。 2010年2月にはシネマート六本木で劇場公開された。


海外映画祭を活用したプロモーションや良い映画祭の条件など、製作者の視点から見た映画祭について、高橋康進監督に話を聞いた。


―海外映画祭にはどのように出品したのでしょうか。

「映画祭にエントリーするためのウェブサイトを利用して、30近くの映画祭にエントリーしました。あとは海外映画祭というキーワードでネットを検索し、日 本語で出てきた主要な映画祭のなかにニューヨーク国際インディペンデント映画祭があり、大きそうな映画祭だと思い、出すことにしました」

「香港国際映画祭にもエントリーしましたし、有名過ぎて絶対に無理だろうと思いながら、台湾の金馬映画祭などにも出しました。人から勧められてヘルシンキ 国際映画祭にも出したところ、そこではノミネートされなかったのですが、エントリーしていないストックホルム国際映画祭に招待上映で呼んでいただけまし た。このように映画祭にはつながりがあります」


―ドイツで開催されている日本映画の映画祭ニッポンコネクションでも上映されましたね。

「ニッポンコネクションで当時ディレクターを務めていたアレックス・ツァールテンがゆうばり国際ファンタスティック映画祭のコンペ作品をいち早く見ており、コンペ作品の10本から私の作品を含め、2本だけを選んでくれました」

「ニッポンコネクションは非常に良い映画祭でした。日本映画に特化した映画祭にも関わらず、まず何よりかなり多くのお客さんが見に来るわけです。会場自体 はホールではなく、大学の校舎で、飾り付けも手作りで文化祭のようでした。ただ、来場者数がすごくて、観客も直接話しかけてきてくれますし、反響が直接伝 わります。ダイレクトにお客さんの反応が見られるので勇気をもらえます。もちろん監督に対するケアもしっかりしており、とにかく楽しかったです。主役を やった役者と1週間ほど一緒に滞在しましたが、彼も本当に楽しくてよかったと言っていました」


「作品を持っていって楽しかったということと、お客さんの反応を見ながら直接話ができるという良い映画祭だと思います。セレクションされた他の作品を見る のも楽しかったです。ニッポンデジタルというセクションとニッポンシネマという35ミリや全国劇場公開をされている作品などのセクションがあるのですが、 自主映画とメジャー映画を一緒の建物のなかでほぼ同じ扱いでやってくれるというのもすごく良かったです。メジャーとか自主映画とか関係なく、映画として見 てくれるというのはすごくうれしかったですね」


―そこから他の映画祭につながっていったわけですね。

「ニッポンコネクションから確実につながったのはバルセロナアジア映画祭、カナダ・トロントの新世代映画祭、レインダンス映画祭です。これらは全部つな がっています。イギリスのジャスパー・シャープとトロントのクリス、オランダのトム・メスといったキュレーターがニッポンコネクションで見てくれていて、 そこからお呼びがかかったり、ジャスパーさんが色々と紹介してくれたりして、新世代映画祭やオランダのカメラジャパン映画祭にも招待していただけました」

―エントリーした全部の映画祭で上映できるわけではないのですよね。

「エントリーして上映までたどり着く打率は3割ぐらいですが、主要な映画祭で上映されると、他の映画祭のキュレーターの人たちがそこで見てくれています。 映画祭は色々な意味で見本市だと思いますので、そこに選びにきている人がいるということがよく分かりました。そこから広がるわけです」

―多くの海外映画祭に出品しようと思われたのはなぜでしょうか。

「日本で何かをやろうとしても映画祭の数も限られていますし、1つ賞を取らなかったらその先がないということになりがちです。それだと劇場公開は難しいと思ったので、海外に出てみようと思いました。もちろん、国内のぴあフィルムフェスティバルなどにもエントリーしており、日本でうまくいけばよいのですが、 日本の映画祭は少なく、ダメだったときのリスクも大きいので、そういう攻め方をしようという戦略が最初からありました」【つづく】