A_Story_From_Chikamatsu
『近松物語』(1954年)


10月22日(土)から30日(日)まで開催される第24回東京国際映画祭で、数々の巨匠監督たちに愛された名女優、香川京子の特集上映「香川京子と巨匠たち」が東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催で行われる。

香川さんは溝口健二、小津安二郎、黒澤明、成瀬巳喜男、今井正ほか数々の日本映画界の巨匠たちの監督作品に出演。本年、その輝かしい業績により、日本人初のFIAf(国際フィルムアーカイブ連盟)賞を受賞することが決定している。映画祭会期中、授賞式も行われる予定。第20回東京国際映画祭でもコンペティション国際審査員を務めるなど東京国際映画祭とのゆかりも強い。香川さんの女優人生を通して、日本映画史の傑作・名作群を改めて紹介する。

香川京子さんは、「今秋10月の東京国際映画祭に出品される、素晴らしい作品の数々は、春の大震災によって傷ついた多くの日本人の心を癒し、支えにもなってくれることと信じています。なお、映画祭の企画に「香川京子の特集上映」を加えて下さったとのこと、誠に光栄と存じ、心から感謝申し上げます」とコメントしている。

この特集では、巨匠・溝口健二監督の傑作の一本として知られる香川さん主演作『近松物語』(1954年)が新訳ニュープリントで上映される他、多数の傑作・名作を上映する。

Kagawa_Kyoko
香川京子さん

【プロフィール】
東京都出身。都立第十高女(現・豊島高校)卒業後、新東宝に入社。1950年、島耕二監督の『窓から飛び出せ』で映画界にデビュー後、成瀬巳喜男監督の『おかあさん』(52)、今井正監督『ひめゆりの塔』(53)、小津安二郎監督『東京物語』(53)、溝口健二監督『近松物語』(54)、黒澤明監督『どん底』(57)、『赤ひげ』(65)、『まあだだよ』(93)、熊井啓監督『深い河』(95)などに出演。90年・熊井啓監督『式部物語』でキネマ旬報助演女優賞、93年『まあだだよ』で日本映画批評家大賞女優賞、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを受賞。同じく93年には毎日映画コンクールにて長年の業績を称えられ田中絹代賞が贈られた。テレビドラマや舞台でも広く活躍。最近の映画では『阿弥陀堂だより』(02)『赤い鯨と白い蛇』(05)『東南角部屋二階の女』(08)『BALLAD 名もなき恋のうた』(10)などに出演している。98年秋、紫綬褒章、04年秋、旭日小綬章を受賞。著書に「ひめゆりたちの祈り」(92年、朝日新聞社刊)、「愛すればこそ スクリーンの向こうから」(08年、毎日新聞社)がある。


『近松物語』(1954年)
原作:近松門左衛門 監督:溝口健二、脚本:依田義賢 音楽: 早坂文雄
出演:長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、小澤 栄、菅井一郎
京都の大店の手代・茂兵衛は、あらぬ疑いを受け、主人の若妻おさんとの不義密通の汚名を着せられる。家を逃げ出し琵琶湖で抗議の心中を図ろうとするおさんと茂兵衛。しかし、茂兵衛の思慕の情を知ったおさんは、心を変え、二人で逃避行を続けることを決意する。近松門左衛門『大経師昔暦』のおさん・茂兵衛の悲恋物語を、巨匠・溝口健二が透徹した美意識で映画化した傑作。