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高橋康進監督(3月31日)


(3)からの続き

―映画祭での受賞の効果はいかがでしたか。
「ニューヨーク国際インディペンデント映画祭での受賞はプロモーションで非常に役立ちました。ニュースとしても文化通信さんが掲載してくれましたので、受賞の効果は大きいと思いました」

―たくさんの映画祭へエントリーするにはそれなりにコストがかかると思いますが、心配はないのでしょうか。
「やはり数を出さないと、自分の作品を気に入ってくれる人を見つける道をふさいでしまっているのでもったいないと思います。出せば出すほど広がりが出てくるので、いろいろなところから話が来たりします」

「コストについてはそれなりに心配した方がいいと思いますが、それなりにというのは何万円の単位の話です。例えば、映画祭出品支援サイトを検索してみる と、ただでエントリーできるところから、20ドル、50ドル必要な映画祭もあります。ただ、50ドル必要な映画祭というのは、結構大きな映画祭です。自分 が見た映画祭のうち、最高でもエントリー料は120ドルですからそんなに気にする必要はありません。どちらかというと作品の送料のほうがかかりますね」

―海外の映画祭にエントリーするためには英語字幕も必要ですね。
「字幕については、僕はカナダ人の友人に下訳をしてもらいました。海外の映画祭では、劇中のセリフを書き出したダイアローグリストを要求されることが多い ので、翻訳の段階で日本語と英語のダイアローグリストを作っておくといいです。僕は自分で作成しました。字幕作成を依頼する場合、原稿を作るまでに普通は 30万円から50万円ぐらいかかるはずですが、いろいろと工夫することで、コストを削減することは可能です」

―海外の映画祭に出席するには渡航費や滞在費もかかりますね。また、現地でのセールスにはどのぐらいの期待が持てるのでしょうか。
「現地に行くことがすごく大切だと思いながらも、その部分は非常に苦しむところです。今の世界の映画祭の現状ですが、ニッポンコネクションなどは宿を提供してくれましたが、インディペンデントの映画祭で渡航費が出たところは1カ所もありません」

「現地で配給が決まるという期待はしていましたが、実際はありませんでした。ただ、買い手が手を挙げてくれるかどうかは作品と買い手の相性もあるのではないでしょうか」

―『ロックアウト』は海外映画祭を中心にプロモーション活動をされてきたわけですが、どのような総括ができますか。
「「世界が愛した才能」というコンセプトで行った劇場公開についていえば、僕たちは、ぴあフィルムフェスティバルやゆうばり国際ファンタスティック映画祭 といった日本の映画祭の価値観のなかだけで評価されていません。日本の主要な映画祭では受賞していませんが、必ずしも彼らだけが正しいわけではありませ ん。確かに、僕たちは2人とも海外での生活経験があり、海外の視点で映画を作ってもいますが、多くの映画が、日本の価値観のなかだけで判断されるのは非常 にもったいないと思います。日本人だけではなく、より多くの人々に映画を見てもらえるという点でも海外映画祭への出品はよかったと思っています」

【了】