
下北沢映画祭運営委員会の太田創さん(右)と有賀香代子さん(左)
新しさと古さが同居する町、東京・世田谷区の下北沢。そんな町の雰囲気に似合う多彩な映画が上映されるのが下北沢映画祭だ。11月25日から27日まで開催される同映画祭は今年で早くも3回目となる。
25日は午後8時から9人の多彩なクリエーターによる紙芝居イベント、26日は漫画家のタナカカツキさんとフィギュアイラストレーターのデハラユキノリさ んによるトークショー、今泉力哉監督の「こっぴどい猫」の上映と今泉監督と主演のモト冬樹さんの舞台あいさつ、27日は審査員の1人である黒沢清監督の トークショーとコンペティション部門9作品の上映が予定されている。
映画祭運営の舞台裏について、キーパーソンに話を聞く「映画祭の愉しみ」。今回は下北沢映画祭運営委員会の太田創代表、企画部の有賀香代子部長、広報担当の眞野雄次さんに話を聞いた。
――映画祭を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
「映画が好き、イベントが好き、下北沢が好き、という色々な方が集まって、映画祭をやったら面白そうだというのが最初の動きで、最初はサークルのような雰囲気でした。集まっては話し合いを繰り返し、組織が固まるまでに2年半ほどかかりました」
「映画祭を始めるに当たっては、まずメンバーが自腹を切らないということを大原則にしました。コンペティションにはエントリーフィーを1000円ずついただいており、チケット収入もあります。この2つを原資として、この範囲でできるスケールでやっていくことにしたのです」
――映画祭を開催するノウハウはどのようにして得たのでしょうか。
「第1回目の映画祭を始める前の1年間に4回ほどコンペティション形式の上映会をやりました。当時はスタッフも全員が映画祭運営の初心者でしたので、とに かく経験を積まなければならないと思ったのです。今年の映画祭でも会場となっている北沢タウンホールの12階に少し広めのスペースがあります。まず、チラ シを作って作品を募集し、下北沢映画祭0.1というタイトルを付けて、そこで上映会を行いました」
「第1回の上映会のときには12作品ぐらいしか集まりませんでしたが、第2回で約40作品、第3回目が約70作品の応募がありました。3回目の上映会では ゲストをお呼びすることができたほか、会場も広くなり、赤字を出さずに本番に近いイベントをやることができました。その翌年の初めに、それまでの応募作品 の中から未上映の良い作品をセレクトして4回目の上映会を開催しました。こうして上映会を4回開催し、その後ようやく正式な第1回下北沢映画祭を開催する ことになりました。このときは約200作品が集まりました」
――多くの作品が集まりましたが、作品を集めるためにどのような工夫をされたのでしょうか。
「一番大きいのは下北沢というブランド力だと思います。また、映画祭には「既成概念にとらわれない」というコンセプトがあり、これが応募者の方々に受け入 れられたのではないでしょうか。ただ、コンペティション部門で上映された作品が本当に既成概念を砕いているものかといえば、そうだとは言い切れず、課題と して残りました」
「一般の映画祭とは違った色々な作品を幅広く紹介していきたいと思っています。ただ、例えばアートフィルム系の行き過ぎたものだと普通の人は受け付けませ ん。入門的だけど、映画マニアが見ても面白いと思えるような幅の広さや、普通の人から見て違和感がなく、敷居が低いということが重要だと思っています」
「下北沢という町がそういうカラーを持っています。ミーハーな方も来れば、マニアックな方も来るといったように、ごちゃごちゃしている町とこの映画祭の親 和性があります。映画祭は山ほどあり、テーマも似ています。そのなかで下北沢というブランドと、ブランドに負けない内容で差別化していきたいと思っていま す」
――1回だけのイベントにはしたくなかったということですね。
「映画祭は続けることに意味があると思っています。実は、この映画祭を始める4〜5年前にも下北沢で映画祭がありました。それは大手広告代理店がバックに 入って大規模に開催したのですが、1回だけで終わってしまいました。投下する資本に対して採算が合わないということだったのではないでしょうか」
「応募していただく作家の方に意味があるものでないといけないと思います。幸い内容的にも企画チームのほうで、インディーズ系とメジャー系の中間あたりの作品やゲストをうまく選んでくれています」
――予算面はいかがでしょうか。どのぐらいの予算をかけていますか。
「舞台監督や音響などの技術系のスタッフの方々は、本来であればお金を払ってお願いしなければならないのですが、今はすべて手弁当でやっていただいていま す。第1回の映画祭の予算は50〜60万円でした。普通であれば広報予算にもならないぐらいの金額です。2年目からは約20万円の助成金が付き、運営が多 少楽になりました。何にしてもやりたいという意識がものすごく大事で、すべての原点だと思います」
――人材面はいかがでしょうか。
「スタッフは約30人です。イベントが好きか、下北沢が好きか、映画が好きか、というどれかですね。本番が近づくと人数が増えていきますが、何もない期間や準備期間が長く、その期間は中心となる5人から10人ぐらいが活動しています」
――作品の募集についてはどのような方法で行われてきたのでしょうか。
「第1回のときは、モノクロのチラシを映像関連の学校や映画館に設置してもらいました。もう1つはウェブでの告知です。また、公募ガイドという雑誌に掲載 してもらったり、その時々の雑誌に載せてもらったりしました。一番効果が大きいのは「登竜門」というウェブサイトで、そこから情報を得て応募される方がほ とんどでした」
――作品の選考はどのようにされていますか。
「今年採用した形式についてお話しさせていただきますと、1次審査は5人のメンバーで全部の作品を見ました。そこで点数を付け、選ばれた作品を委員会内で協議します。最終的に上映作品が決まるまでには3カ月ぐらいかかります」
――会場を確保するのは難しくないのでしょうか。
「第1回の映画祭で会場とした北沢タウンホールは、会場を使用する月の6カ月前に行う抽選会で予約しなければなりませんでした。くじ運が悪く、会場の予約 を取るまで結構の期間が必要でした。また、抽選に当たってそこから6カ月後が開催期間になるわけですから、その時点からダッシュしなければなりません。そ のため開催時期が安定しないことと準備期間が短いことが課題となりました。第2回目のときには下北沢成徳高等学校のミモザホールという比較的新しいホール を借りることができることになり、第2回目は早い段階から準備ができました」
「第3回の映画祭も本当はミモザホールを使う予定だったのですが、学校の都合でホールが使えないことになり、抽選会に行くことになりました。幸いこの時は1回で予約を取ることができましたが、会場を確実に押さえられるかどうかは非常に重要です」
――企画についてはどのようにされていらっしゃるのでしょうか。
「基本、コンペティションがメーンとなっているので、それに併せてゲスト審査員の方のトークショーがあります。その他、映像に関わる方々をお呼びしています。」
――今年の目玉となる企画にはどのようなものがありますか。
「基本的には企画者の呼びたい人をお呼びしています。毎回少しずつ厚みを持たせていきたいので今年は紙芝居のイベントを加えて3日間の日程で開催すること にしました。コンペティション部門では他の映画祭で賞を取ったり、ノミネートになったりしている作品もあります。モト冬樹さんといったいかにも芸能人と いった方が来られるのも下北沢映画祭では初めてです」
――観客の方へのメッセージがあればお願いします。
「下北沢が好きで、たまたまふらっと入ってきていただいても楽しめます。そこから映画や映像の世界が好きになるきっかけになればと思っています」
第3回下北沢映画祭は11月25日から27日まで、下北沢の東洋百貨店3階と北沢タウンホールを会場に開催される。
下北沢映画祭の開催スケジュールの詳細や会場案内は以下のサイトで。
http://shimokitafilm.com/
「第1回目の映画祭を始める前の1年間に4回ほどコンペティション形式の上映会をやりました。当時はスタッフも全員が映画祭運営の初心者でしたので、とに かく経験を積まなければならないと思ったのです。今年の映画祭でも会場となっている北沢タウンホールの12階に少し広めのスペースがあります。まず、チラ シを作って作品を募集し、下北沢映画祭0.1というタイトルを付けて、そこで上映会を行いました」
「第1回の上映会のときには12作品ぐらいしか集まりませんでしたが、第2回で約40作品、第3回目が約70作品の応募がありました。3回目の上映会では ゲストをお呼びすることができたほか、会場も広くなり、赤字を出さずに本番に近いイベントをやることができました。その翌年の初めに、それまでの応募作品 の中から未上映の良い作品をセレクトして4回目の上映会を開催しました。こうして上映会を4回開催し、その後ようやく正式な第1回下北沢映画祭を開催する ことになりました。このときは約200作品が集まりました」
――多くの作品が集まりましたが、作品を集めるためにどのような工夫をされたのでしょうか。
「一番大きいのは下北沢というブランド力だと思います。また、映画祭には「既成概念にとらわれない」というコンセプトがあり、これが応募者の方々に受け入 れられたのではないでしょうか。ただ、コンペティション部門で上映された作品が本当に既成概念を砕いているものかといえば、そうだとは言い切れず、課題と して残りました」
「一般の映画祭とは違った色々な作品を幅広く紹介していきたいと思っています。ただ、例えばアートフィルム系の行き過ぎたものだと普通の人は受け付けませ ん。入門的だけど、映画マニアが見ても面白いと思えるような幅の広さや、普通の人から見て違和感がなく、敷居が低いということが重要だと思っています」
「下北沢という町がそういうカラーを持っています。ミーハーな方も来れば、マニアックな方も来るといったように、ごちゃごちゃしている町とこの映画祭の親 和性があります。映画祭は山ほどあり、テーマも似ています。そのなかで下北沢というブランドと、ブランドに負けない内容で差別化していきたいと思っていま す」
――1回だけのイベントにはしたくなかったということですね。
「映画祭は続けることに意味があると思っています。実は、この映画祭を始める4〜5年前にも下北沢で映画祭がありました。それは大手広告代理店がバックに 入って大規模に開催したのですが、1回だけで終わってしまいました。投下する資本に対して採算が合わないということだったのではないでしょうか」
「応募していただく作家の方に意味があるものでないといけないと思います。幸い内容的にも企画チームのほうで、インディーズ系とメジャー系の中間あたりの作品やゲストをうまく選んでくれています」
――予算面はいかがでしょうか。どのぐらいの予算をかけていますか。
「舞台監督や音響などの技術系のスタッフの方々は、本来であればお金を払ってお願いしなければならないのですが、今はすべて手弁当でやっていただいていま す。第1回の映画祭の予算は50〜60万円でした。普通であれば広報予算にもならないぐらいの金額です。2年目からは約20万円の助成金が付き、運営が多 少楽になりました。何にしてもやりたいという意識がものすごく大事で、すべての原点だと思います」
――人材面はいかがでしょうか。
「スタッフは約30人です。イベントが好きか、下北沢が好きか、映画が好きか、というどれかですね。本番が近づくと人数が増えていきますが、何もない期間や準備期間が長く、その期間は中心となる5人から10人ぐらいが活動しています」
――作品の募集についてはどのような方法で行われてきたのでしょうか。
「第1回のときは、モノクロのチラシを映像関連の学校や映画館に設置してもらいました。もう1つはウェブでの告知です。また、公募ガイドという雑誌に掲載 してもらったり、その時々の雑誌に載せてもらったりしました。一番効果が大きいのは「登竜門」というウェブサイトで、そこから情報を得て応募される方がほ とんどでした」
――作品の選考はどのようにされていますか。
「今年採用した形式についてお話しさせていただきますと、1次審査は5人のメンバーで全部の作品を見ました。そこで点数を付け、選ばれた作品を委員会内で協議します。最終的に上映作品が決まるまでには3カ月ぐらいかかります」
――会場を確保するのは難しくないのでしょうか。
「第1回の映画祭で会場とした北沢タウンホールは、会場を使用する月の6カ月前に行う抽選会で予約しなければなりませんでした。くじ運が悪く、会場の予約 を取るまで結構の期間が必要でした。また、抽選に当たってそこから6カ月後が開催期間になるわけですから、その時点からダッシュしなければなりません。そ のため開催時期が安定しないことと準備期間が短いことが課題となりました。第2回目のときには下北沢成徳高等学校のミモザホールという比較的新しいホール を借りることができることになり、第2回目は早い段階から準備ができました」
「第3回の映画祭も本当はミモザホールを使う予定だったのですが、学校の都合でホールが使えないことになり、抽選会に行くことになりました。幸いこの時は1回で予約を取ることができましたが、会場を確実に押さえられるかどうかは非常に重要です」
――企画についてはどのようにされていらっしゃるのでしょうか。
「基本、コンペティションがメーンとなっているので、それに併せてゲスト審査員の方のトークショーがあります。その他、映像に関わる方々をお呼びしています。」
――今年の目玉となる企画にはどのようなものがありますか。
「基本的には企画者の呼びたい人をお呼びしています。毎回少しずつ厚みを持たせていきたいので今年は紙芝居のイベントを加えて3日間の日程で開催すること にしました。コンペティション部門では他の映画祭で賞を取ったり、ノミネートになったりしている作品もあります。モト冬樹さんといったいかにも芸能人と いった方が来られるのも下北沢映画祭では初めてです」
――観客の方へのメッセージがあればお願いします。
「下北沢が好きで、たまたまふらっと入ってきていただいても楽しめます。そこから映画や映像の世界が好きになるきっかけになればと思っています」
第3回下北沢映画祭は11月25日から27日まで、下北沢の東洋百貨店3階と北沢タウンホールを会場に開催される。
下北沢映画祭の開催スケジュールの詳細や会場案内は以下のサイトで。
http://shimokitafilm.com/