
謹慎中のエリート官僚廉司(浅野忠信)と風俗嬢ゆり子(小泉今日子)を乗せた車は北海道の片田舎を走っていく。彼らはなぜ一緒にいるのか。そしてどこを目指していくのか。相米慎二監督の『風花』は、共通点のある水と油が氷点下の外気のなかで混じり合っていくような雰囲気を持っている。
男と女を乗せた自動車が走るロードムービー仕立て。移動する先々で、二人の過去の断片が随所に挿入されていく。決して過去から現在へという流れではなく、時として後先が逆転した過去が描かれていく。そうしていくうち、徐々に彼らの人物像が浮かび上がってくるさまはスリリングでもある。
それにしても小泉今日子が美しい。いつまでも変わらない野良猫のようなイメージだ。ゆり子と5歳になる実の娘が対面するラスト、娘の手のひらからピョンとカエルが飛び出してくる。ゆり子が以前飼っていたカメの硬い甲羅がゆり子の心の状態を示していたように、飛び出すカエルはゆり子の心の解放を表しているようだ。
(2014年3月29日、広島市映像文化ライブラリー)(矢澤利弘)
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