
居心地のいい場所には人が集まってくる。荻上直子監督の『かもめ食堂』は、フィンランドで小さな食堂を開いた日本人女性サチエと店に集まった人々との交流と日常を描く。
サチエはヘルシンキにかもめ食堂をオープンさせたが、一カ月経っても客はゼロだ。淡々と店を続けるサチエは、訳ありな二人の日本人女性と出会う。
食堂の繁盛記のようで繁盛記でもない。サチエは客を集めるためにガツガツしている訳でもなく、ふらっと店の前を通った人間が気軽に入れる店を目指している。
大きな事件が起こる訳でもない。一見すると、悪そうな人物も登場するが、よく話を聞いてみると、悪い人物ではない。みな善人ばかりだ。
そんなキャラクターたちに囲まれて、店には少しずつ客が集まり始める。おいしいコーヒーの入れ方、新しいおにぎりの開発、シナモンロールの商品化、そんな日常の描写でこの映画は構成されている。
店内のテーブルや厨房などのインテリアは木製の北欧家具でスタイリッシュだし、女優たちの着ている服もスタイリッシュだ。ふんわりした時間の流れる佳作である。
(2014年3月29日午後3時、広島市映像文化ライブラリー)(矢澤利弘)
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