
長年に渡る片思いの恋の行方と史実との絡み合いが涙腺を刺激する。ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督の『マフィアは夏にしか殺(や)らない』は、マフィアによる殺人の連鎖と一人の子供の成長劇を見事に折り合わせたユニークな作品に仕上がっている。
『ペッピーノの百歩』で助監督の経験を持つディリベルトの監督デビュー作。トリノ映画祭で観客賞を受賞していることからも分かるように、テンポのいい明快な作品である。
舞台は1970年代のシチリアのパレルモ。町はマフィアによる恐怖が支配していた。冒頭、主人公のアルトゥーロが生まれるまでの描写は、『アメリ』の冒頭でアメリが生まれるまでの経緯を描いた部分を思い起こさせる。
アルトゥーロの人生の傍らにはいつもマフィアという存在がある。小学生のアルトゥーロは転校してきた少女フローラに一目惚れする。その思いは大人になってからもずっと続くが、どんなに頑張っても彼の恋は実らない。そうした恋の行方に絡んでくるのがマフィアによる殺人である。アルトゥーロの人生の節目には必ずといってよいほど、マフィアによる殺人が起こるのだ。
フローラの気を引こうと、アルトゥーロは作文による選抜を勝ち抜いて子供の新聞記者となる。さっそうと取材をしていくアルトゥーロの姿には爽快感が漂う。彼が人として成長していく姿を見れば、観客は彼を応援せざるを得ない気持ちになるだろう。そして、アルトゥーロとフローラの恋が成就する瞬間、観客は心のなかで拍手しているに違いない。
歴史的な事実をフィクションに巧みに取り込んだ映画には、例えば『フォレスト・ガンプ/一期一会』などの先例があるが、 本作は、事実と創作とが混じり合い、フィクションの部分がよい意味であたかも史実であるかのような錯覚をもたらす。
(2014年5月10日午後3時15分、大阪ABCホール、イタリア映画祭2014osaka)(矢澤利弘)
『ペッピーノの百歩』で助監督の経験を持つディリベルトの監督デビュー作。トリノ映画祭で観客賞を受賞していることからも分かるように、テンポのいい明快な作品である。
舞台は1970年代のシチリアのパレルモ。町はマフィアによる恐怖が支配していた。冒頭、主人公のアルトゥーロが生まれるまでの描写は、『アメリ』の冒頭でアメリが生まれるまでの経緯を描いた部分を思い起こさせる。
アルトゥーロの人生の傍らにはいつもマフィアという存在がある。小学生のアルトゥーロは転校してきた少女フローラに一目惚れする。その思いは大人になってからもずっと続くが、どんなに頑張っても彼の恋は実らない。そうした恋の行方に絡んでくるのがマフィアによる殺人である。アルトゥーロの人生の節目には必ずといってよいほど、マフィアによる殺人が起こるのだ。
フローラの気を引こうと、アルトゥーロは作文による選抜を勝ち抜いて子供の新聞記者となる。さっそうと取材をしていくアルトゥーロの姿には爽快感が漂う。彼が人として成長していく姿を見れば、観客は彼を応援せざるを得ない気持ちになるだろう。そして、アルトゥーロとフローラの恋が成就する瞬間、観客は心のなかで拍手しているに違いない。
歴史的な事実をフィクションに巧みに取り込んだ映画には、例えば『フォレスト・ガンプ/一期一会』などの先例があるが、 本作は、事実と創作とが混じり合い、フィクションの部分がよい意味であたかも史実であるかのような錯覚をもたらす。
(2014年5月10日午後3時15分、大阪ABCホール、イタリア映画祭2014osaka)(矢澤利弘)