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 大自然がもたらす心の解放への旅。ジョルジョ・ディリッティ監督の『いつか行くべき時が来る』は、アマゾンの雄大な大自然を舞台に、30歳の女性の心の動きを描く。ロードムービーといえば、ロードムービーだといえるだろうか。サンダンス映画祭コンペティション部門正式出品作品。

 子供を亡くし、夫にも去られたアウグスタは、新たに生きる意味を求めてブラジルに渡る。母の友人である宣教師フランカと行動をともにしたり、スラム街に住んだりして、現地の人々と交流するうちに、彼女の心は少しずつ癒されていく。 

 美しいアマゾンの風景を捉える撮影監督ロベルト・チマッティのカメラがすばらしい。撮影した映像にはあまりにも美しすぎて、編集でカットされたものがたくさんあったという。主人公の心の外側の次元へ行ってしまう恐れがあったため、自然のドキュメンタリーのような美しさになりかねない映像は削ぎ落とした。

 全体としてゆったりとしたテンポで映画は進む。それは、主人公のゆるやかな心の動き、そして、主人公のゆるやかな旅と呼応する。小さなボートがアマゾン川をゆっくりと流れていくような感覚だ。

 ストーリーには、人身売買や政府によるスラム街の撤去計画といったセンセーショナルな内容も含まれているが、心の内面を描くのがテーマであるためか、映画はそれほどテンションをあげるわけではない。

 アウグスタは最終的に自分の心を取り戻したのであろうか。映画は静かに幕を閉じる。

(2014年5月10日午後5時30分、大阪ABCホール、イタリア映画祭2014osaka)(矢澤利弘)