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 確かに不思議で仕方がない。フェデリコ・フェリーニとはいったい何者だったのだろうか。エットレ・スコーラ監督の『フェデリコという不思議な存在』は、ドキュメンタリー風に撮られた巨匠フェデリコ・フェリーニ伝である。

 フェリーニは、風刺雑誌「マルカウレリオ」に漫画家として職を得て、その後シナリオライター、映画監督として頭角を現していく、そうしたフェリーニの歩みが白黒の画面で描かれていく。いかにもドキュメンタリー風だが、 いかんせん映画は嘘をつくための道具だ。どこまでが真実で、どこまでが幻想なのか、観ているほうは、実はよく分からない。

 ローマの町を自動車でドライブしながら映画のインスピレーションを得ていくフェリーニ。ローマの町をゆっくり移動する自動車の内部を追っていくカメラが印象的だ。撮影監督ルチアーノ・トヴォリは、以前から白黒で映画が撮りたいと語っていたが、まさに彼の本領発揮というところか。 本作ではかなりの部分が白黒の画面で構成されている。

 映画の撮影現場はまるでサーカスだ。フェリーニの好きなサーカスのイメージは、撮影現場とダブって見えてしまう。 

(2014年5月11日午前11時、大阪ABCホール、イタリア映画祭2014osaka)(矢澤利弘)