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大人になると、いつしか幼年時代の記憶は失われていく。子供のころにどんなに楽しく日々を生きていても、後になれば思い出せないことが増えていく。いつしか疎遠になってしまった親友たち。誰にでもそんな友人がいるのではないだろうか。

真壁幸紀監督の『時ノカケラ』は、掘り起こしたタイムカプセルから見つかった土偶によって、小学校時代の記憶を呼び覚ましていく女性のドラマである。

小学校の同窓会に出席したアサミ(木乃江祐希)は、同級生の健斗が行方不明になっていることを知る。卒業時に埋めたタイムカプセルを掘り起こすと、その中から右手の欠けた土偶が見つかる。それは健斗が未来に託した宝物だった。

アサミは、過去の記憶を手繰り寄せていく。健斗はアサミのことをどのように思っていたのだろうか。そして、健斗がアサミに手渡した土偶の右手の意味は何だったのだろうか。

ふとしたすれ違いと誤解から、アサミは健斗からもらった右手のカケラを放り投げて捨ててしまう。映画はアサミの記憶を幻想的なタッチを取り入れて描いていく。そこに映画的な快楽を感じさせずにはいられない。大人になって、右手の意味にやっと気づいたアサミ。今になって校舎の周辺に落ちているであろう右手のカケラを捜し始める。果たして右手は見つかるのだろうか。

なんであのとき、気が付かなかったのだろう。なんであのとき、こうしなかったのだろう。そして、あのときこうしていれば……。人生なんてそんなことの繰り返しだ。さまざまなことが心の中で完了しないまま時が過ぎていく。

ラストシーン。見つかった右手。幼年期が今やっと終わったという解放感に包まれる。

平井真美子の音楽が郷愁をそそる。本作はロードアイランド国際映画祭でも入選している。

(2014年7月20日午後12時30分、SKIPシティ多目的ホール、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)(矢澤利弘)