ジェルミナール・アルバレル監督の『時空を超えた事件』は、初老の刑事が過去にタイムスリップし、未解決事件に立ち向かうサスペンス映画である。フランス映画らしいエスプリのある作品に仕上がっている。
初老の刑事リシャール・ケンプ(ジャン=ユーグ・アングラード)と精神科医エレーヌ(メラニー・ティエリー)がそれぞれ過去と現在という二時点間の二役を演じている。
過去にタイムスリップした人物が、ある事件を未然に防ごうとあれこれと画策するドラマは少なくない。ただ、本作は『ターミネーター』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような派手なSFタッチの作品にはなっていない。過去にタイムスリップした主人公がいかに自分のことを周囲に信じさせるかといったディテールに重きを置いた構成だ。そのため、多少の冗長さが否めないが、その変わり、繊細な人間描写で最後まで引き付ける。
『海の上のピアニスト』で主人公が恋をする少女を演じたメラニー・ティエリーもなかなかいい女優となった。
(2014年7月20日午後2時、SKIPシティ映像ホール、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)(矢澤利弘)
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