『苔まみれの転石』メイン


地方に住む者にとって、東京というのは実に恐ろしいところである。末廣朋樹監督の『苔まみれの転石』は、小説家を志す卑屈な青年の孤独と挫折を描く。最近の自主映画には珍しく16ミリフィルムで撮影されている。

警備の仕事をしながら小説を書き溜めている青年、江川厚は、プライドだけは高く、いつも周囲を見下している。ある日、自作の小説が賞を獲ったことから、彼は東京に向かう。

地方ではそれなりに優秀だと自惚れていたが、東京に出て来れば、自分よりすごい人間が山ほどいる。江川は井の中の蛙だったことを実感せざるを得ない。そんな彼の気持ちを、この映画は的確に描写している。

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015インターナショナルショートフィルムコンペティション出品作品。

(2015年2月20日午前10時、ホテルシューパロ錦水の間)(矢澤利弘)