『もうしません!』メイン画像

モキュメンタリーと言ってしまってもいいのだろうか。井野瀬優監督の『もうしません!』は、ある映画の制作過程をドキュメンタリー風に追ったように作られた負け組3人の人生模様を描くドラマである。

リスナーが100人もいないような売れないインターネットラジオ局のMC、自宅警備員と称する無職、ティッシュ折り師と称する得体の知れない仕事をする男。時間に縛られないと言い訳しながら、社会の底辺を生きるうだつの上がらない3人が一発逆転を狙って手を出したのが、映画作りだった。

バイオリニストのAYASAを主演に映画を撮ろうと奮闘努力するが、いかんせん、映画を作ったこともない彼らのすることだから、当然すんなりといくわけがない。

映画制作の舞台裏を記録していくドキュメンタリーのように、映画は進む。その進行過程は随時、インターネットラジオのMCによって語られていく。それが映画全体に緊張感を与えており、スピード感のある構成になっている。

映画を撮る過程を描くという内容は、いわゆる映画関係者の内輪受けを狙ったようなテーマでもあり、こじんまりとしすぎた感も否めないが、構成の妙で見せる。

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015フォアキャスト部門出品作品。

(矢澤利弘)