レオパルディ

 天才というものはいつの時代でも普通の人間とは違う。だが、すべての面で普通でないかと言われると、そうではない。マリオ・マルトーネ監督の『レオパルディ』は、19世紀の大詩人ジャコモ・レオパルディの数奇な人生を描く。早熟の天才といっても、苦しみも喜びもある。本作品はそんなレオパルディの隠された部分にも焦点を当てる。

 ジャコモが娼館へ行くシーンなど、夜間の野外シーンの美しさは特筆すべきで、レナート・ベルタの安定したキャメラが冴えている。全体的にセリフの量が多く、文学者ピエトロ・ジョルダーニとジャコモが文通をしながら親交を深めていく件では、延々と手紙の朗読が続く。しかし、それは決して退屈ではなく、二人のキャラクターを描くには的確な方法だろう。

 ジャコモを演じているのはエリオ・ジェルマーノで、彼はダリオ・アルジェントの『ドゥ・ユー・ライク・ヒッチコック?』でも主役の映画マニアの学生を演じていた。本作では脊柱に病を持つ病弱な天才のキャラクターをダイナミックに演じている。

 ベスビオス火山の噴火で締める本作は、まさにかつての「イタリア映画」の王道である。

(2015年5月3日13:20、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭)(矢澤利弘)