緑はよみがえる

 戦争は怖い。そして無意味だ。それを伝えるだけでも、この映画の価値がある。エルマンノ・オルミ監督の『緑はよみがえる』は1917年の冬、激戦地の一つだった北イタリアのアジアーゴ高原におけるイタリア軍の小隊の一夜を描く。

 戦争映画といっても、大雪で覆われた塹壕のなかでほとんどの物語が進み、登場人物も少ない。敵のオーストリア軍の姿も見えない。敵が打ち上げる照明弾が月夜の白雪を照らすなか、兵隊たちは殺され、生き残った兵隊たちも死の恐怖に怯える。

 80分の上映時間のなかに、オルミは戦争の無意味さを封じ込めた。

(2015年5月3日18:50、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭)(矢澤利弘)