生きていてすみません!


 才能がありながら、不遇な立場に置かれている人間が、本来あるべきポジションに就こうと努力するというストーリーラインのドラマは少なくない。リッカルド・ミラーニ監督の『生きていてすみません!』(日本公開題『これが私の人生設計』)もそんな映画の一本であり、男性優位というイタリアの労働環境を皮肉ったコミカルな作品だ。

 きっちりと計算された笑いに、少々の社会風刺を織り込むことで、100%社会派のドラマよりも説得力があるのではないだろうか。コメディというものはこうあるべしという定石に忠実な作品である。

 どこの国の映画であっても、コメディ映画というものはなかなか国外には輸出しにくいと言われる。笑いのネタがその国の有名人のモノマネであったり、その国特有のギャグだったりした場合、外国ではそうしたネタが受け入れられないからだ。だが、この映画の笑いは、内輪受けのようなダジャレ的なものではなく、国境を越える本質的なものだろう。


(2015年5月4日10:20、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭)(矢澤利弘)