モンテビデオの奇跡_main

                     (c)Intermedia Network


 事実に基づいた童話のような映画。ドラガン・ビエログルリッチ監督の『モンテビデオの奇跡』は、南米ウルグアイで1930年に開催された世界初のサッカーワールドカップで活躍したユーゴスラビアチームのメンバーを描く群像劇である。

 ユーゴスラビアというサッカーではパッとしない国のチームが一回戦で強豪のブラジルと対戦し、意外にも勝利を収める。はじめはマスコミからも無視され、ホテルも粗末な安宿だったユーゴスラビアチームだったが、勝利をきっかけにして一躍脚光を浴びることになる。やはり勝負は勝たなければダメなのである。そうすると現地の女性にもモテるし、人々の待遇が変わってくる。

 最初は無名のチームだったが、彼らが勝ち進んでいくという物語の流れからすると、スポーツ根性ものなのではないだろうかと思うかもしれないが、そうではない。いかにも南米を舞台にした物語らしく、展開がゆるいのだ。登場人物たちはもともとが国を代表するプロなのだから、別に特訓するわけでもなく、現地では酒を飲んだり、地元の女性と恋愛をしたりと、特に緊迫した生活を強いられているわけではない。

 そんなユルユルな展開だが、クライマックスに向かうに従って、彼らを取り巻く状況は一変する。開催国ウルグアイチームとの一戦では審判の判定も何もかもが不公平に扱われる。ユーゴスラビアチームはどんなに頑張っても勝てるわけがないという状況に追い込まれていく。このシーンには警備の警官がボールを蹴ったり、ユーゴスラビアチームがせっかく入れた得点を無効にしたりといったエピソードが出てくるが、監督によれば、それらはすべて本当にあったものなのだという。

 迫力のあるサッカーシーンは、複数のカメラを同時に回して何度も撮影した。役者たちも相当のサッカーができるようにならなければならなかったため、サッカーと演技の両方ができる役者のキャスティングをするために3〜4カ月を必要とした。サッカーの練習にも2〜3カ月を要した。

(2015年7月22日午前11時、SKIPシティ多目的ホール、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)(矢澤利弘)

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ドラガン・ビエログルリッチ監督(中央)(撮影:矢澤利弘)