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 ハンディキャップを背負った子供を描く場合、作品のタッチが暗くなったり、お涙頂戴物になったりしがちだ。だが、アミン・ドーラ監督によるレバノン映画『ガーディ』は、そんな難しいテーマをハートウォーミングかつユーモアたっぷりに描いていく。

 レバノンの小さな村で育った音楽教師のレバは結婚して二女一男を授かるが、末っ子で長男ガーディはダウン症だった。毎日、窓際に座って奇声を発するガーディに近所の住民たちは困惑する。住民たちからガーディを施設に預けろと突き上げられたレバは、息子は神の言葉を伝える天使なのだと嘘をつき、息子を守ろうとする。

 この物語の中核は、息子を守るために奮闘する父親を描くことにあるのだが、映画は冒頭、レバの少年時代から成長し、結婚して子供たちが生まれるまでをていねいに描いていく。レバ自身も少年時代には吃音症だったが、いつの間にかそれが治ってしまったことや、幼なじみのララと結婚するきっかけなどをスピーディーに紹介していくのが小気味良い。

 主人公レバを演じるジョージ・カッバスは、本作の脚本も手掛けた才人であり、レバノンの大スターである。プロデューサーのガブリエル・シャムーンによると、この映画の企画はカッバスがシャムーンに映画のアイデアを持ってきたところから始まった。シャムーンはカッバスにアイデアが気に入ったというと、カッバスはすぐに脚本を書いてきたのだという。知り合いの監督アミン・ドーラもこの脚本が気に入り、早速、この映画のプロジェクトが始まった。レバノン国内では4か月のロングランになり、劇場での上映後には拍手が起こったという。

 ロケは、レバノンのバトルーンという町で行われた。石造りの建物に入り組んだ路地といった異国情緒たっぷりな風景が印象的だ。暗くなりがちなテーマをコミカルかつ軽快なテンポで語っていく手法はすばらしい。


(2015年7月22日午後5時30分、SKIPシティ多目的ホール、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)(矢澤利弘)
 


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『ガーディ』のガブリエル・シャムーン プロデューサー(中央)(撮影:矢澤利弘)