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大塚千弘さん、佐々部清監督

 佐々部清監督の『ゾウを撫でる』は、ある新作映画に関わる人々の、それぞれの人間模様をスケッチ風に描いていく。Youtubeで公開された8分間の短編ドラマの連作を10本つないで1本の長編映画に再構成した構造となっている。

 俳優やスタッフだけではなく、台本の印刷会社の社員、フィルムコミッションの職員、大道具を運ぶトラックの運転手、など、様々な人生 が紡がれていく。
 
 タイトルは、インドのことわざの「群盲象を撫でる」から取られた。盲人達は、それぞれゾウの鼻や足など別々の一部分だけを触り、その感想について語り合う。しかし触った部位により感想が異なることになる。実際、この映画で描かれている人々も様々だ。

 各パート1日、合計で10日ぐらいで撮影した。東日本大震災の後の話であり、さりげない部分に原発のテーマが散りばめられている。例えば、この映画には54本の苗木の話が出てくるが、これは日本の原子力発電所の数を示している。

 それにしても、1本の映画を作るためには、実に様々な人々が関わる。佐々部監督によると、フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』のような映画を作りたかったという。


(2015年11月7日午前11:30、シネマ尾道、お蔵出し映画祭)(矢澤利弘)