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笠原賢人さん、鈴木公成製作総指揮

 沖田光監督の『ニート選挙』はニートから後ろ盾もなく資金3万円で選挙に挑んだ人物の実話を元にした作品。ドキュメンタリータッチではなく、エンターテインメント性たっぷりの娯楽作として楽しい。

 上映では、製作総指揮で映画の元になった人物でもある鈴木公成氏が舞台挨拶し、「若者の投票率が低いため、選挙に行ってもらいたくて映画を作った」と説明した。こうした意図で作られた映画の場合、どうしても道徳を重んじたいかにも真面目な映画になってしまいそうだが、この作品は、主張を押し付けるわけでもなく、ニートの青春群像ともいえる作品に仕上がっている。

 少年ジャンプの掲げるヒット作の三大要素ではないが、「友情」「努力」「勝利」という要素ががすべて織り込まれている。 8日間で撮影したというが、145分の長尺でもテンポがよく、全くダレることがない。

 もっとも、鈴木氏によれば、「映画を作るのは初めてだったので、映画を作れば誰かが上映してくれると思った」とのことで、今まで劇場公開はされず、自主上映だけが行われていた。今回が初めて劇場で上映する機会となったという。

 ニートを題材にしているといっても、興味本位ではなく、いたって真摯にテーマに向かっており、開票のシーンでは手に汗を握る展開を見せる。

(2015年11月7日午後3時40分、シネマ尾道、お蔵出し映画祭)(矢澤利弘)