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柳英里紗さん、榊英雄監督

 親子の関係って、なかなか一筋縄ではいかないもの。だが、親はいつだって子供のことを思っている。不器用な親も、不器用な子供もいるのだ。榊英雄監督の『トマトのしずく』は、疎遠になってしまった父親と娘の不器用な関係を描く。

 美容院を経営する夫婦の真とさくらは、近く結婚式を挙げるにあたり、さくらの父・辰夫を式に呼ぶか呼ばないかで言い争いになっている。父子家庭で育ったさくらの胸中には、幼い頃、母を亡くした時の出来事が大きく引っかかっていたからだ。
 
 さくらはそのときのある出来事を思うと、父を許すことはできなかった。そんな時、父の辰夫も娘を想い、亡き妻が残した家庭菜園の前で決意する。それは久しく会ってない娘に直接会いに行くことだった。そして、娘の結婚式当日がやってくる。

 本作は親子の確執と和解という人類史上の永遠のテーマを軽快に描いている。小西真奈美が演じる娘と石橋蓮司が演じる頑固で不器用な父親。両者の和解の瞬間が微笑ましい。

 トマトに向かって「幸せになあれ、幸せになあれ」とおまじないをするさくら。それはかつて母親がしていたことと同じである。なんだか、見ているほうも幸せな気分になってくる。やっぱり子供っていうのは親の影響が一番大きいのだ。


(2015年11月8日午後3時50分、シネマ尾道、お蔵出し映画祭2015)(矢澤利弘)