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 ミゲル・ゴメス監督の『アラビアンナイト』は、「アラビアンナイト=千夜一夜物語」の形式を借りて、ポルトガルの経済危機をめぐる複数のエピソートをつないだ作品である。三部作で構成される『アラビアンナイト』のうち、「第一部 休息のない人々』が21日、広島国際映画祭で上映され、上映後にはゴメス監督による質疑応答が行われた。


「途中で考えが変わるということがあった。一つの映画の経験は次の経験とは違う。もし第一部が気に入らなかったら、第二部は気に入るかもしれません。もし、第一部が気に入ったら、第二部は気に入らないかもしれません」

「最初から三つの映画にしようとは思っていませんでした。映画を編集するときにアイデアが出てきました。撮影期間は1年で、様々なシーンを撮影するというアプローチでした。ポルトガルの実際の生活に基づいた映画を作りたかった。脚本はありませんでした。ジャーナリストのチームと協力し、彼らからのリポートを受けて撮影しました。それを発展させていろいろなアイデアが出てきたのです」

「現実と想像の世界を結びつけるというアプローチを採用しています。現実と想像の世界が補完しあうのです。最初は失業者のドキュメンタリーになりそうでしたが、想像の世界も重要だと思ったのです。文学的な話とポルトガルの生活の物語をどのように結びつけるかがジレンマでした」

「私には9歳の娘がいて、5歳のときに難しい質問をしてきました。ある日、娘は「プレゼントが欲しい」と私に言いました。私は「それは無理だ」と答えました。そうすると娘は経済危機の話を口にしたのです。そのときに私は認識しました。5歳でも経済危機のことを知っているのです。そこでポルトガルの経済危機についての映画を作ろうと思ったのです。子供にも分かるような話にしようと、アラビアンナイトの構造にしました」

(2015年11月21日午後12時45分、NTTクレドホール第1会場、広島国際映画祭)(矢澤利弘)