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広島国際映画祭では、22日午前9時半からダミアン・マニヴェル監督の『犬を連れた女』と『若き詩人』を上映した。上映後にはマニヴェル監督による質疑応答が行われた。

『犬を連れた女』は、迷子の犬を飼い主に届けた青年(レミ・タファネル)が、犬の飼い主の大きな黒人の婦人に誘惑される過程を描いた15分間の短編作品。『若き詩人』は一人の青年(レミ・タファネル)が、詩人になろうとする物語だ。

『若き詩人』が作られたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。
「主人公役のレミが14歳のときに、最初の映画『犬を連れた女』を撮り、その後18歳になり、バカロレアを取ったばかりだというメールをもらった。そのメールには、監督ともう一度仕事をしたいと書いてあった。それで3週間後にはシナリオなしで撮り始めた。レミにインスピレーションを受け、ぶっつけ本番で作っていった。自分自身、映画監督というインスピレーションを探す仕事をしており、詩人がインスプレーションを探すというテーマは自分と同じ立場の話だった。レミはいきなり入ってくるような感じで、宇宙人のような人です。いつも同じ服を着ているので、無声映画の登場人物に近いと思います」

セリフは準備したのでしょうか。
「即興で作られていますが、50%は即興、50%は事前に用意したものです。詩を読むシーンはレミが実際に書いたものです。撮影中、レミはやる気になってどんどん詩を書いていました」

女の子に詩を読むシーンは印象的でした。
「レミはまず歌を考えました。でも直前になって歌わないでくださいと言いました。その場で考えてくれと言いました。まさにその場で詩を作って演じたのです。そのため、非常に繊細さが出てきたと思います。私は俳優たちにやりなれないことを要求する傾向があります」

全編が固定カメラで撮影されていましたが、何らかの意図があったのでしょうか。
「私は偶然をたよりに映画を作っていますが、ドキュメンタリーではなくフィクションを撮っています。実際に撮影するときには、さっとカメラを置いて、偶然が起きるのを待つのです。スタッフは三人しかいませんでした。照明担当もいないので、固定カメラで撮ったのです。また、固定カメラで撮影することは、私の心の有り様を示しているのです。固定カメラだと、細かいところにも目が届きます。風景とレミの体との対話があります」

『犬を連れた女』は監督の実体験ですか。
「いえ、私の実体験ではありません。私は村上春樹、レイモンド・カーヴァーから影響を受けています。何も起こらないけれども、緊張感がある時間を表現することを目指しました」

(2015年11月22日午前9時30分、NTTクレドホール、広島国際映画祭)(矢澤利弘)