広島国際映画祭では、22日午後12時からミゲル・ゴメス監督の『アラビアン・ナイト 第二部 孤独な人々』が上映された。第二部は山中で逃亡生活を送る凶悪犯を描いた『腸なしシモンの逃亡の日記』、野外劇場で芝居として演じられる法廷劇『裁判官の涙』、プードルの飼い主たちの運命を描いた『ディクシーの所有者』という3つのエピソードで構成されている。上映後にはゴメス監督による質疑応答が行われた。
「最初は一本の映画を作っていたが、気づいたら三本になっていました。三人の登場人物によって様々な国をまたいで話が展開します。第一部から第三部までの『アラビアン・ナイト』はいわば、コンピューターゲームのようなもので、第二部は苦しみのレベルにいて、作品も暗い。主人公たちはポルトガル人そのものを表しています。第二部で完結させようと思っていましたが、あまりにも悲惨なので第三部を作ることにした。この映画では、犬のディクシーを除いて、すべての登場人物が孤独です。人間はみんなデタラメだが、それは社会がめちゃくちゃにしているからだ。犬はそうではないのです」
「最初のパートは殺人者の物語で、俳優は素人です。第三部でも彼についての話が描かれます。二つ目のエピソードは演劇出身の女優が主人公です。その他、出演者はプロです。三つ目はいろいろな人が混じっています。私はアマチュアにはプロのようにしてくれとも、プロにアマチュアのような演技をしてくれとも言いません。それぞれに特徴があるからです。様々な人々にどのように演技指導するか。こういうルールに従ってというようなものはありません。カメラの前でどのような人物なのか、その対象を知るところから始めます。犬については「待て」「行け」「くわえろ」という三つの命令が出せます。三つの指令を使いこなすことによって彼はロバート・デニーロのように演じることができるのです。最初の物語の主人公はアマチュアですが、彼の元々の仕事は山で鳥を獲ることです。プロにはできないような優雅な山の歩き方をしているので彼を選びました。二つ目のエピソードの主人公は裁判官であり、こういう演技ができるのはプロでなければならないと思います」
「この映画は実際に起きたポルトガルの出来事を参考にしています。犯人は2カ月に渡って山で生き延びたということで伝説と化していました。彼は一般の人々にとってヒーローとなっていました」
(2015年11月22日午後12時、NTTクレドホール、広島国際映画祭)(矢澤利弘)