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こうした映画を見るたびに、世の中には凄い人がいるものだと思わずにはいられない。稲塚秀孝監督の『NORIN TEN 稲塚権次郎物語』は、世界の小麦の70%以上の基になった「農林10号(ノーリン・テン)」の育種者、稲塚権次郎の生涯を描いた伝記映画である。

農学の世界では世界的に有名な人物であったとしても、一般的には稲塚権次郎という名前すら聞いたことがない人も多いのではないだろうか。彼は、第二次世界大戦後の世界的な食糧危機を救い、農の神様と呼ばれた人物である。

一時は進学を諦めていた権次郎だが、富山県立農学校を首席で卒業後、帝国大学農科大学に入学、卒業後は、農商務省の農事試験場に就職し、最初は稲、後になって小麦の育種に取り組むことになる。

映画は、彼の紆余曲折ある仕事一筋の人生を追っていく。学校で学んだことを血や肉とし、仕事に打ち込む様は素直に凄いと思わずにはいられない。

権次郎の若い時代を松崎謙二、老年時代を仲代達矢が演じる。また、野村真美が妻イトの娘時代から老年時代までを演じている。


(2015年11月29日午前10時、サロンシネマ、食と農の映画祭)(矢澤利弘)